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佐藤健さん×MISAMO——プロが作った映像の世界観を「違和感」で消費する記事の問題

佐藤健さん×MISAMO——プロが作った映像の世界観を「違和感」で消費する記事の問題

2月11日、佐藤健さんがTikTokでMISAMOとの共演動画の舞台裏を公開しました。ダンスに挑戦する佐藤さんの姿にファンから好意的な反応が集まっています。

ところがこの記事は、見出しで「違和感」「視線」という言葉を選んでいます。

佐藤健、MISAMOと並んで"頭1つ分の身長差"に集まる違和感…足元の「すっごい」ブーツに集まる視線

佐藤さんとMISAMOの身長差が大きく見える、という話自体は、SmartFLASHがすでに報じています。そのときの見出しは「驚愕の声続出」でした。

同じ出来事が、4日後に別メディアで再登場している。しかもトーンが変わっている。「驚き」が「違和感」になり、「衣装の違い」が「シークレットブーツ」になっている。

この記事の煙は、単独で読んだときより、メディア間での情報の再生産という構造の中で見たときに、はっきりと見えてきます。


「違和感」——ファッションを疑惑に変換する言葉

まず、見出しの言葉を確認します。

"頭1つ分の身長差"に集まる違和感

「違和感」という言葉には、「何かがおかしい」「不自然だ」というニュアンスがあります。

でもこの場面で起きていることは何でしょうか。俳優がヒールブーツを履いて撮影に臨んだ。それだけです。

記事自身もこう書いています。

佐藤さんはフリルのシャツに黒パンツ、黒いヒールブーツを合わせ、大きなハットをかぶって登場

これは衣装です。スタイリングです。撮影現場でヒールのあるブーツを履くことは、俳優にとって珍しいことではありません。

ところが見出しが「違和感」と呼ぶことで、ファッションの選択が「何かおかしいこと」として提示されます。読者は、記事を開く前に「この身長差には問題がある」という前提で読み始めることになります。


「シークレットブーツ」「10センチ盛ってる」——ファンの声か、記事の誘導か

記事はファンの反応としてこう引用しています。

《すっごいヒールブーツ》 《シークレットブーツ履いてる?》 《10センチくらい盛ってるのかな?身長差が良い感じ》

「シークレットブーツ」という言葉が持つニュアンスは、単なるヒールブーツとはまったく違います。「シークレット」は「隠している」「ごまかしている」という意味を含みます。「盛ってる」も同様に、本来の姿を偽っているかのような響きがあります。

記事が引用しているのはファンの投稿です。でも、記事が見出しで「すっごいブーツ」を強調し、「違和感」と並べたことで、これらの声が記事の主張を補強する構造になっています。

しかもよく読むと、引用されている3件のうち、明らかにネガティブなトーンのものはありません。「身長差が良い感じ」という投稿すらあります。にもかかわらず、見出しは「違和感」「視線」で構成されている。ここにも見出しと引用の温度差が生じています。


「プロ意識の高さ」——前半の疑惑を後半で回収するマッチポンプ

この記事の構成には、もうひとつ特徴的なパターンがあります。

前半では「違和感」「シークレットブーツ」と疑惑のトーンで描いておきながら、後半で女性誌ライターにこう語らせています。

「佐藤さんは、普段から記者会見などでもヒールブーツを取り入れることが多く、全体のバランスを美しく見せるスタイリングが得意」

「シーンや相手に合わせて"魅せ方"を自在に変えられるのも、佐藤さんのプロ意識の高さだと言えますね」

前半で疑惑を提示し、後半で持ち上げる。これはマッチポンプ構造と呼ばれるパターンです。自分で勝手に火をつけておいて、自分で消す。

結果として読者に残る印象は、「プロ意識が高い」よりも「シークレットブーツ」「盛ってる」のほうが強くなります。見出しに入っているのは「違和感」と「ブーツ」であって、「プロ意識」ではないからです。


4日前のSmartFLASH記事との比較——同じ話題がどう変質したか

ここで、同じ出来事を報じたSmartFLASH記事と比較してみます。

SmartFLASH(2月10日配信):

  • 見出し:「デカすぎる」"想定外の身長差"に驚愕の声続出
  • トーン:驚き・面白がり
  • 結論:衣装(ブーツやハット)の違いで説明がつく
  • 締め:「大物たちの身長差には、そんなカラクリがあったのだ」

ピンズバNEWS(2月14日配信):

  • 見出し:「違和感」「すっごいブーツに集まる視線」
  • トーン:疑惑・詮索
  • 焦点:ブーツのヒールの高さ → 「シークレットブーツ?」「10センチ盛ってる?」
  • 締め:「プロ意識の高さ」(ただし見出しには反映されない)

同じ出来事です。同じ「衣装の違いで身長差が大きく見えた」という話です。

しかし4日の間に、トーンが「驚き」から「違和感」に変わり、「衣装の違い」が「シークレットブーツ」になり、「面白いね」が「おかしくない?」に変質しています。

さらに言えば、ピンズバNEWSの記事にはSmartFLASH記事への言及がありません。「実は身長差が話題になったのは、今回だけではないという」と書いていますが、ここで参照されているのは過去の記者会見の話であり、4日前に同じ話題で記事が出ていたことには触れていない。

これがクロスメディア増幅の構造です。ある話題が一つのメディアで記事になり、それを別のメディアが角度を変えてもう一度記事にする。読者はそれぞれ別の記事として読みますが、結果的に同じ「身長差」の話題が複数回にわたって繰り返し流通する。繰り返されるたびに、それが「話題になっている」ことが既成事実化していきます。


プロフェッショナルの仕事を「違和感」で片付けること

そもそもこの記事は、俳優の靴のヒールの高さを取り上げて「違和感」「シークレットブーツ」「盛ってる」と言及しています。

ここで忘れてはならないのは、佐藤さんが一人で衣装を選んで現場に来たわけではない、ということです。

映像作品の撮影現場には、スタイリスト、ヘアメイク、映像ディレクター、カメラマンなど、多くのプロフェッショナルが関わっています。衣装の一つひとつ——シャツの素材、パンツのシルエット、ブーツのヒールの高さ、ハットのデザイン——は、映像全体の世界観を作るためにチームで選ばれたものです。

佐藤さんのブーツは、MISAMOの衣装と並んだときにどう映るかも含めて、プロが設計したスタイリングの一部です。

それを記事が「違和感」「シークレットブーツ」「盛ってる」と呼ぶことは、俳優個人の身長をからかっているだけではありません。その映像を作り上げたチーム全体の仕事を、外から揶揄していることになります

ヒールのあるブーツを履くことは、性別を問わず日常的に行われていることです。ましてや撮影現場では、全体のバランスを考えた上でのプロの判断です。それを「シークレット」と呼ぶことは、プロフェッショナルの仕事を「ごまかし」として扱うことにつながります。

記事は後半で「プロ意識の高さ」と褒めていますが、そもそもヒールブーツが記事の見出しになること自体が、制作チームの仕事に対する敬意を欠いているのではないでしょうか。


SmokeOut視点:コンテンツを作る側と、消費する側の非対称

SmartFLASH記事の分析で書いた通り、「衣装が違ったから身長差が大きく見えた」は一文で終わる話です。

それが2月10日に一度記事になり、2月14日にまた別のメディアで記事になっている。しかも2回目は「驚き」から「違和感」にトーンが上がっている。

これは、同じ「非ニュース」が繰り返されることで「ニュースっぽさ」を獲得していく過程そのものです。1回目は「面白ネタ」、2回目は「話題になっている件」になる。3回目があれば「物議を醸している」になるかもしれません。

中身は最初から変わっていません。衣装が違っただけです。

そしてもう一つ、見落とされがちな構造があります。

佐藤さんとMISAMOのコラボ動画は、多くのプロフェッショナルが時間と技術を注いで作り上げたコンテンツです。映像のコンセプト、衣装の世界観、ダンスの振付、カメラワーク——その全体が一つの作品として公開されている。

メディアがやったのは、その作品の中から「ブーツのヒール」だけを切り取り、「違和感」と名付けて記事にすることでした。

コンテンツを作る側は、チーム全体で何時間もかけて世界観を構築しています。それを消費する側が、数行の記事で「シークレットブーツ」と揶揄する。この非対称さに、メディアはもう少し自覚的であってほしいと感じます。


まとめ:「違和感」があるのは、記事のほうでは?

  • ヒールブーツを履くことは「違和感」でしょうか?それとも、プロのスタイリストが映像全体のバランスを考えて選んだ衣装の一部でしょうか?
  • 同じ話題を4日後に別メディアが角度を変えて再び記事にする——その繰り返しに、何が生まれるでしょうか?
  • 多くのプロフェッショナルが作り上げたコンテンツから「ブーツのヒール」だけを切り取って記事にすることは、作品への敬意と言えるでしょうか?

佐藤さんがMISAMOとの共演で見せたのは、慣れないダンスに挑戦するチャーミングな姿でした。記事もそれを伝えています。でも見出しが「違和感」と「ブーツ」を選んだ時点で、読者に届く印象は変わってしまいます。

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