☕️ 「とばっちり」って、軽く言うけどけっこう重くない?
10月9日、西スポWEB OTTO!の記事タイトルに、こんな一文が並びました。
「草間リチャード敬太の逮捕で“大先輩”に思わぬとばっちり」
Aぇ! groupの草間リチャード敬太さんが逮捕された。
そこまでは、ニュースとして理解できます。
でも記事を読み進めると、なぜか話題は紅白歌合戦の司会候補(?)・村上信五さんに飛びます。
え、なぜ急に紅白?
もはや「連想ゲーム」レベルの展開です。
🔍 事件→紅白→司会…その間に“論理”はあるのか?
記事の流れを整理してみましょう。
A:草間さんが逮捕(事実)
↓
B:紅白出場が消滅した(推測)
↓
C:村上信五さんの司会にも“黄信号”(憶測)
はい、これ。
まず、AとBのあいだ、論理ゼロです。
紅白の「出場消滅」なんて、誰も発表していません。
「取り沙汰されている」「限りなく低くなった」という言い回しだけ。
つまり、空気でつないでます。
ここで発動しているのが、
- A→B:non sequitur(論理的飛躍)
- B→C:slippery slope(滑り台論法)
という“誤謬コンボ”。
論理の橋じゃなくて、感情の吊り橋効果で読者を渡らせてる感じです。
💬 「関係者が語る」って、誰?
この記事のもうひとつの魔法の言葉、それが「関係者」。
「前出の業界関係者」
「芸能プロ関係者」
といった匿名発言が次々に出てきます。
でもこれ、誰か分からないまま信用させる技法です。
レトリック名で言うと 「権威への訴え(appeal to authority)」。
“誰かが言ってた”を出すだけで、読者の頭の中に“信頼っぽいもの”を作る。
IFJ倫理憲章 はこう警告しています。
匿名情報は「公共の利益」のためにのみ使うべきで、匿名の理由を説明しなければならない。
でもこの記事では説明ゼロ。
匿名の数だけ、物語が濃くなる仕組み。
🧠 “とばっちり構文”の本質:罪のエリア拡張
この構文が危険なのは、「悪いことが起きた」だけで終わらず、
「誰が困ったか」まで勝手に広げるところです。
草間さんの件をきっかけに、紅白出場、司会、事務所の信頼——
まるで一連のドミノ倒し。
けれど実際には、その多くが想定や憶測の域を出ていません。
「一個人の行動を他者の損失と結びつけることは、報道の中立性を損なう」
と明記しています。
“罪の連鎖”を描いているようで、実際は“ニュースの拡張パック”を作っているだけ。
🌐 感情の波で人をつなぐバンドワゴン
そしてお決まりの一文。
「X上でも嘆きの声が聞かれる」
はい出た。バンドワゴン効果(bandwagon effect)です。
“みんな嘆いてる”と書かれると、つい「そうなんだ」と思ってしまう。
でも、その「みんな」は何人なのか、誰なのかは不明。
声の数もバランスも示されないまま、“世論のような何か”に化ける。
ニュースが感情を媒介にして読者を巻き込む構造、
これがSmokeOutで言う「感情連鎖構文」です。
Council of Europe「Resolution 1003」 も警鐘を鳴らしています。
「報道は感情を利用するのではなく、理解を促すものでなければならない」
つまり、記事の“黄信号”は村上さんじゃなくて、書き方そのものに点灯してませんか。
🪄 見出しリライト:とばっちりを止める
元タイトル:
「草間リチャード敬太の逮捕で“大先輩”に思わぬとばっちり…有力視された『紅白歌合戦』司会にも黄信号」
🌤 改善案(SmokeOut基準):
草間リチャード敬太さん逮捕 関係各所が対応を進める
“黄信号”は止めよう。その言葉ひとつで、誰かが「連鎖の中の被害者」にされてしまう。
ニュースは、ブレーキを踏む側であってほしい。
🌻 まとめ:「とばっちり」って、ほんとに“報道語”なの?
誰かの過ちが、別の誰かの“印象の損失”に変換されていく。
でも、それって事件の話じゃなくて、「書き方」の話じゃない?
ニュースは、誰が悪いかを広げる装置じゃなく、“どこまでが事実か”を見極める羅針盤のはず。
SmokeOutは、火のないところに立つ煙を消すために頑張ります。