🪞「落選」って、本当にそうなの?
橋本環奈 4年連続『紅白』ならず“落選”…『おむすび』低視聴率&パワハラ報道の余波指摘の声
『第76回NHK紅白歌合戦』の司会者が発表され、有吉弘行、綾瀬はるか、今田美桜、鈴木奈穂子アナウンサーが務めることが分かった。その裏で姿を消したのが橋本環奈——。
この一文で、すでに“対比構造”が作られています。
「選ばれた今田美桜」「姿を消した橋本環奈」。
でも、紅白の司会は選挙でも人事でもなく、番組テーマごとのキャスティング。
「姿を消した」「落選」という言葉は、
実際には自然な交代を“降格”のように見せてしまう。
🧩 “低視聴率の余波”という作られたストーリー
「今田さんは朝ドラ『あんぱん』のヒロインとして平均視聴率16.0%の好成績を残し──。ここで注目すべきなのが、橋本さんの“落選”です」
「『おむすび』は朝ドラ史上最低の平均視聴率13.1%を記録」
「パワハラ疑惑も影響したのかもしれません」
この流れ、図にするとこうなります。
A:「おむすび」低視聴率
↓
B:パワハラ報道
↓
C:「紅白」司会から外れる
⇒「AとBが原因でCになった」
一見、筋が通っているように見えますが、実際には AとBの“あとに”Cが起きただけ。
「AのあとにBが起きた」=「AがBを引き起こした」とするのは、
まさに 擬似因果関係(Post hoc fallacy) です。
UNESCO報道倫理ガイドライン(参照リンク)では、
“Journalists must avoid implying causation where only correlation exists.”
(単なる相関を因果のように示唆してはならない)
と明記されています。
つまり、この記事は「低視聴率→落選」という因果っぽい構造を作り出しているだけ。
本来は「同時期に起きた複数の出来事」なのに、“原因と結果”のように見せるレトリックが働いているのです。
🌸 “卒業”と“継承”という本来の流れ
「綾瀬さんは6年ぶり4度目の登板。今田さんは初の大役を射止めました。」
橋本環奈さんは3年間、紅白の司会を務め上げました。
そこから今田美桜さんが引き継ぐ——
これは“交代”ではなく、バトンの継承です。
SPJ(米国プロ記者協会)倫理規定(SPJ Code of Ethics)も、
“Provide context. Do not misrepresent or oversimplify.”
(文脈を伝え、省略や誇張で誤解を生まないこと)
と明記しています。
報道が“誰が外れたか”を強調するほど、“誰が支えてきたか”という文脈が消えてしまう。
けれど本当は、橋本さんの3年間があったからこそ、今田さんの“初の大役”が自然に受け入れられたのです。
💠 3年の功績を、ひとことで消さないで
「紅白から姿を消すのは寂しいですが、現実は厳しいということでしょう」
この“現実は厳しい”という一文の前には、「低視聴率」「報道」「失速」というマイナス語が連なっています。
でも、事実として橋本環奈さんは3年間、紅白の看板を背負ってきた。
それは“厳しい現実”ではなく、誇りに値する実績です。
ニュースは“誰がいなくなったか”ではなく、“誰が残してくれたか”を伝えることもできる。
そこにこそ報道のやさしさがあるはずです。
💭なぜメディアは“落選”という言葉を選ぶのか?
この問いは、SmokeOutがずっと見てきた「報道の構造的習性」です。
- メディアは無意識に「上下関係」や「勝敗構造」を作りたがる
- 「選ばれた/選ばれなかった」という二項対立は短く、見出しにしやすく、SNSで拡散されやすい
- だから、複雑な「バトンの継承」よりも、シンプルな「落選」の方が“絵になる”
つまり、「落選」という言葉は、
橋本さんを貶めたい意図というより、報道構造の効率性が生んだ習慣なのです。
しかし、そこにこそリスクが潜んでいます。
効率を優先するほど、文脈や人の努力が切り落とされていく。
SmokeOutが可視化したいのは、この“構造の省略”そのもの。
🪶 見出しリライト
元タイトル
橋本環奈 4年連続『紅白』ならず“落選”…『おむすび』低視聴率&パワハラ報道の余波指摘の声
SmokeOut基準
橋本環奈さん、3年間の紅白を経て次へ“つないだ功績”
🌱 まとめ:落選ではなく、バトンのリレー
紅白は、1年で終わる番組ではありません。
何十年も続く文化のひとつです。
橋本環奈さんが3年間支えてきたからこそ、今田美桜さんが自然にその舞台へ立てた。
“終わり”を描くニュースの向こうには、“続き”を見つめる人たちがいる。
たまには労う記事があっても良いと思います。
SmokeOutは、火のないところに立つ煙を、今日も静かに晴らします。