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「放心状態」って誰が決めたの?亀梨和也さんの投稿が“ニュース”になるまで。

「放心状態」って誰が決めたの?亀梨和也さんの投稿が“ニュース”になるまで。

☀️ はじまりは、ただの「あちち」だった。

亀梨和也さんがインスタグラムに

「日中のシャツはまだ早かった あちち」

と書き込んだ。

ただそれだけの投稿が、記事になる。

タイトルはこうでした。

「こんな写真載せてどうしたの?」顔が赤く、目は虚ろ、口も…〝放心状態〟元人気アイドルメンバーの投稿に反応様々「放っておけない…」「亀ちゃんオシャレ」

……え、どこが「放心状態」?


🧃「放心状態」という言葉が生む“ニュースの味つけ”

亀梨さんの投稿を実際に見た人なら、こう思うはずです。

「暑そうだけど、普通の写真だよね?」

でも、タイトルに「放心状態」と入るだけで、“何かあったのかも”という不安な想像が始まる。

これが「感情語の誘導(Affective Framing)」と呼ばれる表現技法です。

報道倫理の国際基準、UNESCO報道倫理ガイドライン ではこう示されています。

「ニュースの感情的要素は、事実の報告を補足するためであって、事実そのものを置き換えるものであってはならない。」

つまり、「放心状態」という言葉は、事実ではなく“印象”を報じてしまっている。


🪞写真の“読み方”をつくるのは、言葉のほう

記事本文を読むと、実際にはファンのコメントが中心です。

「かわいいですうう」

「ホントに暑そうな顔ですね」

「体調に気をつけて」

どれも、穏やかな日常的リアクション。

でも、冒頭の見出しで「放心状態」と宣言されていることで、その言葉が写真の“見え方”を変えてしまう。

表情の意味を文章で規定する。

この手法をSmokeOutでは「視覚印象の言語固定(Framing by Caption)」と呼んでいます。

まるで、写真が「何を表しているか」を、記者が先に“決めて”見せてしまうような構造。


📸「心配」も「批判」も、記事の中で増幅する

記事には「心配の声」も引用されています。

「こんな写真載せてどうしたんですか!」

「放っておけないよ」

でも、その“心配”は、写真を見て心配した人もいれば、この記事タイトルを見て心配した人も出てくる。

タイトルが先に「放心状態」と言ったことで、“心配”が生まれる順序が逆転しているんです。

本来:

👉 投稿を見る → 心配する人がいる → その声を記事にする

でも実際は:

👉 記事タイトルが率先して不安を作る → コメント欄で心配が増える →さらに 「反応様々」と書ける

この構造は「循環的引用(Circular Quoting)」と呼ばれる典型的な手法。

IFJ倫理憲章

では「報道は、事実の確認を伴わない感情的反応の拡散を避けるべき」とされています。


🧊見出しリライト:言葉を“冷やす”だけで、伝わり方は変わる

元タイトル

「こんな写真載せてどうしたの?」顔が赤く、目は虚ろ、口も…〝放心状態〟元人気アイドルメンバーの投稿に反応様々「放っておけない…」「亀ちゃんオシャレ」

新タイトル(SmokeOut基準)

亀梨和也さん、インスタに日常の一枚——“あちち”な季節のごあいさつ

ニュースとしての情報量は同じ。

でも、読後感はまったく違う。

“事件”から、“日常”に戻る。


🌱まとめ:報道の温度は、書き手の体温で変わる。

亀梨さんの投稿は、ファンとの何気ない交流。

それを“放心状態”と書いてしまうのは、ニュースではなく感情の設計です。

「心配の声」や「反応様々」というフレーズの裏で、誰かの何気ない日常が“話題”に変換されていく。

メディアの言葉が熱を持つときこそ、私たちは一度“冷ます”視点を持ちたい。

報道の温度を下げることが、信頼の温度を上げること。

SmokeOutは、火のないところに立つ煙を、今日も晴らします。

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