新垣結衣さん「メルティーキッス」CM交代報道を読む
❄️ 「ショック」「ガチ泣き」——冬のニュースが“別れ話”になった日
10月21日、X(旧Twitter)のトレンドに「ガッキー」の名前が上がりました。
きっかけは、明治の冬限定チョコレート「メルティーキッス」の新CM。
14年にわたって出演してきた新垣結衣さんの後任として、俳優・出口夏希さんの起用が発表されたことでした。
「メルティーキッスのCM、ガッキーじゃないの!?」
「ショックすぎる」
「冬の風物詩だったのに、寂しい」
SNSではそんな声が溢れ、ニュースも「騒然」「ショック」の言葉で一斉に報じました。
でも、冷静に考えてみると──
この出来事は“降板”でも“別れ”でもありません。
ただ、広告の交代です。
🪞 「喪失」に見せるニュースの構造
ニュースは「変化」を伝えるだけでなく、しばしばその変化を“物語”として見せます。
特に今回のように「長年続いたものが変わる」ケースでは、それが“別れ”や“時代の終わり”として語られがちです。
この構造をSmokeOutでは「ノスタルジック・レトリック(Nostalgic Framing)」と呼びます。
懐かしさを“喪失の感情”へと変換する手法です。
国際ジャーナリズム倫理指針(UNESCO報道倫理ガイドライン, 2023)では、
「記者は、感情的表現が読者に与える影響を理解し、誤解や過度な情動を招く表現を避けるべきである」
とされています。
つまり、「ショック」「ガチ泣き」といった感情的な語を重ねて変化を“ドラマ化”するのは、報道として慎重さを欠く可能性があるのです。
🍫 変わったのはキャラクター、続いているのは物語
実際、新垣結衣さんは明治の新商品「生のとき」のCMに出演中。ブランドとの関係は続いており、「契約終了」ではありません。
「メルティーキッスからなんか大人の階段を登った感じ」
「相変わらずガッキーは美しい」
SNSの中には、そんな温かい声もありました。
“終わり”ではなく“移ろい”として受け止める人たちもいるのです。
変わったのはイメージキャラクター、続いているのは「冬を彩るチョコと人の物語」。
でもニュースは、いつも“別れ”の方を選ぶ。
なぜなら、そのほうが物語として読まれやすいからです。
🧭 本当の変化は、「受け止め方」の方にある
14年という長い時間を共に過ごしてきたブランドと俳優の関係。
それが変わるとき、私たちはつい“寂しさ”をニュースとして感じてしまう。
でも、国際的な報道倫理の視点(IFJ行動規範やUNESCO基準)から見ると、
本来の報道の役割は「感情を煽ること」ではなく、
事実を淡々と伝え、読者に判断の余地を残すことです。
「ショック」という語を使う代わりに、「14年の歴史に新しい章が加わった」と言い換えるだけで、
ニュースのトーンは驚くほど変わります。
🪶 見出しリライト(SmokeOut基準)
元タイトル:
「ガッキー」Xトレンド入り 「ショックすぎ」「ガチ泣きした」結婚4年半の今…騒然のワケ
改善案:
ガッキー、冬をバトンタッチ。——14年の物語が、静かに次の章へ。
意図:
- 「ショック」「騒然」といった感情語を削除
- 「終わり」ではなく「継承」を軸に
- 報道としての公平さと情緒のバランスを両立
🌱 まとめ:冬は、形を変えて続いていく
ガッキーがいなくなったわけじゃない。
新しい冬を、静かに別の場所で迎えているだけです。
「ショック」と言われたニュースの裏には、実は“続いている”関係がある。
それを見出しで煽るのは、ちょっともったいないですよね。
SmokeOutは、火のないところに立つ煙を、今日も静かに晴らします。